想いを記す

文章に思いを記す、というのは話をするのとは少し違います。文章は推敲も可能ですし、じっくり言葉を選ぶこともでき、書き直すこともできます。自分自身の心の声との対話と言うことが出来るかもしれません。

日記を書く

多くのグリーフ研究者が日記を書くことを勧めています。考えを文章にするという点では話をしたり、手紙を書いたりすることと変わりませんが、日記の特徴はそれは「自分のための文章」であることです。他人に見られることを気にせずに

  • 打ち明けるのが困難な思い、秘密にしたい事も表現できる
  • 後日、過日の状態や感情を読み返すことが出来る

といったメリットを持っています。但し、専門家は次のようなアドバイスをしています。

  • 短い文章でよいので、続ける事
  • その日に感じた事、上手に行ったこと、難しく感じたことを書く
  • 喪失にまつわる感情を喚起された出来事(一日の出来事で悲しさなどの思いが湧き上がる原因となった出来事)とその時の自分の思考や、気持ちを正直に書く事
  • 誤字、脱字、文章としての完成度にこだわらない

追悼集を作る

もう少しフォーマルな形で文章を残す事もできます。ロバート・ニーメイヤーによると、追悼集は「最愛の人を讃える方法の一つで、亡き人に対するあなたの思い、考え、思い出をまとめる物」だと言います。「故人へ捧げるアルバム」とも言えます。この追悼集は、あなたの故人への気持ちと、故人との記録を残し、家族や友人と分かち合うものですから、日記に比べてオープンな性格を持っています。

ロバート・ニーメイヤーは具体的な全体像を次のように紹介しています。

追悼集の編幕方法は作成者の個人的な好みによって決めてもよいのですが、はじめに、亡くなった人の基本的な情報、氏名、 生年月日、出生地、家族構成などを紹介すると読み手にはわかりやすいでしょう。次に、いろいろな 故人の思い出、故人についての回想など、ふさわしい表題をつけてページを展開すればよいと思いま す。以下は追悼集の表題の参考例です。

  • あなたについての最初の思い出は~
  • あなたとすごした大好きな時間は~
  • あなたの1番好きなところは~
  • ほかの誰かのあなたに対するコメントは
  • あなたが大好きな活動は~
  • あなたの好きな座右の銘は~
  • あなたのことを思う時、私は~
  • あなたの思い出を失わないために私がしていることは~

追悼集は、作者がその時々で加筆できるように、余白を充分にとったつくりにすることをお蒐めします。

(「〈大切なもの〉を失ったあなたに」:ロバート・ニーメイヤー)

追悼集の内容は文章中心物でも、写真や絵などを多用したタイプ、どちらでも自分にしっくりする物を製作するとよいと思います。実際の製作には、写真を収めるアルバムでページを増やせるタイプを利用するのが便利ではないでしょうか。メモ、写真、などがはさみやすく、素晴らしい追悼集になると思います。家族や友人に1ページずつ、その人用の「捧げるページ」を作って頂くのも素晴らしいアイディアです。
注意事項:ほかの人が見る記念アルバムですので、基本的にはネガティブなことは書かないほうが良いでしょう。誰でも完璧な人はいませんが、ネガティブな思い出についてはほかの場所で(例:日記)行う方が適当です。

喪失について書く為の課題集

トーマス・アティッグは、故人の事を書くのに、こんなテーマに沿って書くのがいいのではないか、と提案しています。日記や、故人への手紙を書くときに使ってみてはいかがでしょうか。

  • 故人が、まだあなたを大切に思ってくれていると感じることはありますか?どんな時のそれを感じますか?どんな気持ちになりますか?どんな記憶がよみがえりますか?そう感じるというのはどのような経験ですか?
  • あなたが故人を大切に思う気持ちが続いていると表現する事がありますか?どんなきっかけでそうしたいと思うのでしょう。何を言ったりやったりしますか?そうすることはあなたや周りの人にとってどういう意味がありますか?
  • 故人との間でやり残したこと、わだかまりがあればそれをゆっくり考えたことがありますか?そしてその中にお互いを大切にする気持ちを見つけましたか?どんな経験だったでしょうか?
  • 故人が触れたもの、遺したもの(物、場所、機会、食べ物、音楽、活動、経験、他の人など)が絆を感じさせますか?どんな記憶が呼びさまさせられますか?一緒に経験したのはどこだったでしょうか?どのように故人とつながっていると感じますか?そのものをあなたは大切にしていますか?
  • 特別に愛おしい思い出がありますか?どんな細かいことを思い出しますか?なぜそれがあなたにとって貴重なのでしょうか?
  • 記憶を大切にするのにしていることはありますか?記憶を呼び覚まし、いつまでもそれが色あせないで鮮明で、人に話がしやすいように取って置くための、特別な、あるいは一風変わったあなただけの方法がありますか?

  • 故人は何かあなたに無形の遺産を残しませんでしたか?もしかして、故人との約束や契約を守っていませんか?故人のアドバイスを大切にしていませんか?何かを故人が教えてくれたような方法でやっていませんか?故人の好きだったことをやってみのではないですか?そのうち一つでも自分で気に入って、今では自分の趣味になったりしませんでしたか?

  • 自分自身が故人に影響を受けていると感じることはありませんか?故人が生まれた家庭や地域から受け継いできた伝統や文化の影響を受けていますか?あるいはそういったことに親近感を感じますか?

  • 故人はあなたに、希望、辛いときにへこたれない事、信念、根気強さ、勇気、喜び、冒険について教えてくれましたか?どのような心のレッスンがありましたか?どんな時にそれを感じましたか?その教えを受け入れていますか?

(トーマス・アティッグのホームページ「Grief's Heart」より)