新しい役割を引き受ける

人の死によって失われる役割

家族のメンバーが亡くなり、しばらくすると、失ったのは人だけではなく、その人が担ってくれていた役割も、一緒に失われたのだという事がわかります。夫を亡くして収入が無くなる、妻を亡くして食事に困る、といったわかりやすい物もありますが、気がついてみて初めて「ああ、あんなこともしてくれていたんだ」と気が付くようなこともあります(例:庭木の剪定をする人がいない)。

  • 車などの機械類のメンテナンス(車検や、オイル交換、冬のタイヤ交換)
  • 料理、洗濯などの家事
  • 遺された子供の面倒を見る(学校の送り迎え、弁当)
  • 家庭の財務管理
  • 歳暮、中元などの親戚づきあい
  • 力仕事、雪かき
  • 町内会などの近所づきあい

役割をこなす

こういった失われた役割は、誰かが担う必要があります。もちろん中には、これを機会にやめてしまう事の出来る事もあるかもしれませんが、ほとんどの事は、誰かが行ったり、代わりの方法を模索する必要が出てきます。
先ず第一に考えられるのは、家族の中での分担です。家族で話し合って、バランスよく故人の役割を分担できるように話し合えることが出来るようだと理想的です。
しかし、多くのケースで、役割の配分は不十分です。そのようなケースでは、あなたが今までやっていなかったような役割を担う必要があるかもしれません。慣れない役割をこなすのは、戸惑いも多く、疲れやすく、大変な仕事です。喪失の後には、無力感や無気力感が強く、ことさら大変に感じられるでしょう。しかし、必要に迫られて行う事で、今まで行かなかった場所に出かけることで新たな出会いがあるかもしれません。新しい役割の習得には、新しいスキルの習得が必要で、学ぶことに喜びを感じるかもしれません。
あるいは、その役割を担っていた故人との一体感を感じる事があるかもしれません。ある男性は妻の死後に、必要に迫られて料理を始め、その面白さに目覚め、妻の姉に教わって、自分で「妻の味」を再現できるようにまでなりました。この男性は言います。「なんか、一緒に台所に立っているような気がするんですよ。エプロンなんかしているところを見たら、あいつはびっくりしちゃうでしょうがね」。

支援ソースを探す・生活習慣を変える

それでも難しい役割には支援ソースを探す事、全く別の方法を模索する必要があるかもしれません。家事や、育児に関するヘルパーや施設の利用に関して行政に確認する、など、実務に関する支援ソースを探すのは早い方が良いかもしれません。また、場合によっては、大きな生活環境の変化を検討するほうが、良いこともあります。車の運転が出来ないが、車がないと生活できない場所に住んでいるような場合は、思い切って街中に引っ越しをするなどの方向転換が、最終的には、自分の行動の自律性を確保するためにはベストの方法という事もあり得ます。