グリーフ・サバイバー

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悲しみ、痛みを表現する

終わりのないパズル

こうした試練に立ち向かうのはキャスリンがこれまで体験したどんなものともどこか違うという感じがしている。(中略)しかし、いまや無限の数のかけらがあるように思われ、どうしたらぴったり組み合わさるのか、いやそもそも、ぴったり組み合わさるのかどうかも、わからなかった。かけらをいくつか組み合わせると、いっとき、休息と慰めが得られるが、いつも新たなかけらが付け加わり、未完の「パズル」はほとんど毎日のように形を変え、新たな試練が現われる。キャスりンは安定と慰めを得ては失うということを何度もくりかえす。生きつづけるすべを見つける ためにできるだけのことをするなかで、自分が人生で起こる出来事を支配する力をいかに少ししか持っていないかを悟る。完全な支配力はなくても、祈りに信頼を見いだす。いまははっきりした方向は見えていなくでも、道はある。予期せぬことがさらに起こると覚悟し、自分と子どものジョシュとセーラは、生きつづけるかぎりマークの死を受け入れることを学んでいくと予感する。
(トーマス・アティッグ:「死別の悲しみに向きあう」、1998より)

引き裂かれた二人

「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」(2001)挿入歌、「オリジン・オブ・ラブ」

始まり

死は終りを意味するが、残された者には始まりを意味する。
E・シュナイドマン

終わりのない痛み

グリーフの始まりがあり、グリーフの真ん中があり、そしてあなたの残りの人生がある
(キャンディス・ライトナー:MADD - 飲酒運転に反対す母の会 - の設立者)

悲しむ事を暮らす

わたしは,はてしない毎日を悲しみのうちに暮らすばかりでなく、毎日を悲しみのうちに暮らすことにつ いて考えながら毎日を暮らすのだ。
(C・S・ルイス「悲しみを見つめて」西村徹訳、1994)

それぞれの悲しみ方

あなたは、あなたの心に触れたものにしろ、あなたを動転させたものにしろ、あなたを叩きのめしたものにしろ、それがどんなものでも何ひとつ迷うことなく、あきらめられる人なのよ(中略)。イーサンが死んだときも、あなたはあの子の部屋のドアに貼ってあった、ワッキー・パックのシールを1枚一枚全部剥がした。そしてあの子のクロゼットと箪笥をきれいさっぱりからっぽにした。まるでなかなか厄介払いできなかった他人の持ちものみたいに。さらにあなたは地下室にあったあの子のがらくたを近所の人に勧めてまわった。竹馬や橇やスケートなんかをね。それでみんながどうしてそれらを受け取らないのか不思議がった(中略)。あの子の死をあなたが嘆き悲しんだことは分かっている。でも、あなたの経験のしかたには、なんというか、どこか抑制されたところがあるのよ。それが愛であれへ悲しみであれ、なんであれ。あなたは、まわりも変えず自分も変わらず、人生のうわずみをすくって生きていこうとしているのよ。
(アン・タイラー:「アクシデンタル・ツーリスト」田口俊樹訳、1989より)

相手の中の自分の死

喪失の経験がつらいのは、同じ時間と経験を共有しただれかが、その死ごと記憶をあちら側へ奪い去ってしまうから。記憶とは、そのひとのなかに自分が生きていると いうことだから、そのひとの記憶のなかに生きていた自分の大切な部分をもぎとられてしまう。
(「おひとりさまの老後」上野千鶴子)