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喪失を経験した人の中で、ある程度の時間がたっても、何らかの理由でグリーフが進捗、展開せず、ノーマルなグリーフの姿から外れてしまうことがあります。激しいグリーフの気持ちが何カ月も、あるいは、何年も持続することもあります。不快なイメージがよみがえり、嫌な考えが割り込んできて、いやされる過程を阻害し、死は容認できることではなく、かつ、不公平である というような感覚が起きることもあります。死別体験への対処が非常に難しい一部の人にとっては、グリーフが残された関係のすべてであるかのように 感じられ、グリーフの強さが弱まってくることが、亡くなった人への裏切りのように感じたり、強い 罪悪感が継続する人もいます。逆に何も感じられないまま、何か月もが過ぎる人もいるかもしれません。グリーフを経験した人の中で10-20%程度の人に「複雑化したグリーフ」が認められると言い、一種の病的なグリーフで、専門家による援助が望まれます。
二つの「複雑化したグリーフ」の提議を紹介します。
DSMはアメリカ精神医学会が定めた「精神障害の診断と統計の手引き」。現在の最新、第4版改訂版も複雑なグリーフが参考として含まれています。(将来的に正式な診断基準とするかについては解らない。これが慢性的グリーフを「精神病」と定義することになるため、強い反対者が多い。)
A:次の4項目のうち少なくとも3項目の感情を毎日かかなりの割合で感じる
- 侵入的な故人への思い(考えたくなくても考えてしまう)
- 個人への思慕
- 探索行動
- 過剰な孤独感
B:その人が以下の8項目のうち少なくとも4項目の感情を毎日かかなりの割合で感じる
- 将来に関して目的や意味が感じられない
- 無感覚、無関心、感情反応のなさ
- 死を受け入れることが難しい
- 人生はからっぽで無意味だ、という感情
- 自分の一部が死んだと感じる
- 世界が安心できないという感覚(安全、信頼、コントロールがないという感覚)
- 故人がかかっていた病気にかかったり、故人がしていたのよくない行動を自分自身が始める
- 過剰な死に関してのイライラ、敵意、怒り
C:異常の症状による変調が少なくとも6か月続く
D:異常の症状による変調が、社会的、職業上、その他重要な領域で、機能障害を引き起こす
関連リンク:助けを求める
グリーフを複雑化させる要因は様々です。故人と遺された者の関係は、特に親しかった、逆に大変複雑なものであることもあります。亡くなった状況が、突然のもの、あるいは、心的外傷(トラウマ)を伴うようなものであったかもしれません。また、遺された者が、悲嘆(グリーフ)の過程に役立つ対処技能やレジリアンスを持たない、あるいは、社会的なサポートが得られないかもしれません。特定の要因に関してはグリーフに影響を与える要因のハイリスク要因を参照してください。
表面上グリーフ反応が見られないケース。
故人との関係に深刻な問題、特に愛憎的な葛藤があり、このアンビバレントな関係が遺された人のグリーフにも影を落とす。アダルトチルドレン、虐待、アタッチメント不全等の問題を原因とすることが多い。問題が多い関係が終わり、安堵する反面、強い後悔や自責感が現れる。また、関係が依存的な場合は「見捨てられた」という怒りが突出してくる場合もある。
死後、一定期間が経過してもグリーフが始めの強い感情(探索、思慕、怒り、自責など)が続いており、日常生活に影響があるほど適応が進まない。グリーフワークがうまくいかず途中で止まってしまっている。うつ状態である、グリーフする事で故人との繋がりが強く保てると思っている(忠誠心を表現できる)、グリーフから抜け出さない事で注目を集めたいという潜在意識がある、などの理由が挙げられる。
過大を定義するのは難しい問題だが、通常のグリーフにみられる反応が過剰で、過度な不安、悪夢、恐怖感をもち、その感情は強固で圧倒的なため生活適応に障害が現れる。